2017年06月29日

腹をすかせた群衆

先日、ふとしたきっかけから「腹をすかせた群衆」の話を聞いた。ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、ゲイリー・ハルバートという方がマーケティングの話をされた中で出てきた例え話である。提供する側が「これだけいいものだから売れるだろう」と思っていても、購入する側が「欲しい!」と思わなければ物は売れない。この話を聞いた時、私たちの仕事にもすごく当てはまるなと思った。どんなに自分がすごいと思っていても、それを欲してくれる人がいなければ単なる独りよがりになってしまう。

医療の世界なので物を売るわけではないが、医療者側が勝手に思い込んでて患者さんの気持ちをあまり考えていないことは意外にある。いや、たぶん凄くある、と思う。提供側と受ける側で大きなギャップがあればうまくいかないのは道理。

「検査をする」ということを例に取った場合、たくさん勉強してるひとは「検査しなくてもわかるよ」と言う。それだけ自信があるということだが、これは医療者側の目線で、患者さんからしたら「わかる」「わからない」よりも「確実に大丈夫」ということのほうが大事ではないか?どんなにそうだろうと思ってても100%完璧な人間はいない。大丈夫と思っててもそうでないこともまれにある。患者さんは信じて任せているのだから、どんなに自信があっても時々は確認の意味で第二、第三のチェックをしておいた方がいいと思う。

私が肺がんの疑いで病院にかかった時、不安で不安で仕方なかった。これからどうなるのか?どうやって検査するのか?どうやって治療するのか?痛いのか?死んじゃうのか?いろいろな「?」が頭の中でぐるぐる回っていた。知りたいのは「たぶんこうだろう」じゃなくて「まず、間違いない」という確信だった。

任せてもらっていたのに見落としてて(気がつかなくて)大変なことになってた。昔、患者さんに勤務医のKくんが凄く怒られたことがある。私も院長として随分怒られた。どうして気がつかなかったのか?なぜ見落としたのか?Kくんは一生懸命やっていたが、いろいろ事情があって検査項目を絞って最小限でやっていた。うまくいってる時はいいのだが、そうでない時もたまにある。その時にいかに早く気付けるか?ここがおおきなポイントだと思う。たまには見落としたり、忙しくて疲れててそこまで頭が回らなかったり、あるいは知らなかった、ということもきっとある。必要でない検査はもちろんするべきじゃないが、もっと怖がって「確実」に「安全」に「間違いない」という安心が欲しいと思う。
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2017年06月22日

麻酔外科!

先週末、大宮で行われた獣医麻酔外科学会に参加してきました。
今回、この学会参加の一番の目的は、四谷メディカルキューブの笠間先生のお話し「人医療の内視鏡外科医に学ぶ」を聞くことでした!

笠間先生は肥満外科では非常に著名な先生です。
私がまだ内視鏡手術を始めた頃、研究会で直接いろいろなことを教えていただきました。
縫合と結紮は糸で縫ったり結んだりする技術ですが、笠間先生は「一球入魂」ならぬ「一針入魂」の気持ちで一針一針縫っているのだそうです。
動物の内視鏡外科では腸管や胃を切ったり縫合したりする術式がまだほとんどないので一針一針というわけにはいきませんが、それでもその想いには共感するものがあります。

そういえば前回ご紹介したGayet先生も「とにかく慌てず」「丁寧」に「安全」に「確実」に手術を行うことを信条とされておられました。笠間先生にも通ずるところがあり、ぜひ真似しなければならない姿勢だと思います。

内視鏡外科はお腹の中で手術をするので、トラブルがあった時の対応が開腹手術に比べ難しいのが欠点です。
そのかわりとてもよく患部が見えますから、血管の一本一本、神経の一本一本を丁寧に見極めることができます。
顕微鏡でおこなう手術に非常に似ていて、顕微鏡手術も膜を一枚一枚丁寧に剥がしながら手術をしていきます。
だから、縫ったところから出血するということは基本的にありません。
組織の張り具合や緊張を確かめながら縫っていきます。
このように丁寧に手術をすることで出血してから止血するのではなく、出血そのものをしないように心がけます。

また、内視鏡手術ではよく「見えないものが見える」と表現されます。
どういうことかというと、肉眼ではそこまで認識してなくてうっかり切開してる膜一枚もちゃんと見えるという意味です。
見えるということは、膜一枚を残して切開する、あるいは膜一枚深いところを剥離していく、という繊細なことが可能になります。
このことは細い血管を残して切るべき組織を切ることが可能になりますから、当然出血が少なくなり、その結果組織のダメージも少なく、回復が早くなる、手術が安全になるということです。

笠間先生の手術は超肥満の患者さんの胃を部分的に切除し、腸管を切ってから再接続させます。
これを開腹でやったら間違いなく今よりも成績が悪くなる、すなわち手術後の経過が悪くなるとおっしゃっていました。
腹腔鏡手術は単に傷が小さくて痛みが少ないだけではなく、安全性も高いということなのです。

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2017年06月11日

国際学会に参加!

昨日まで3日間ほどお休みを頂き、横浜で開かれた「日本肝胆膵外科学会」に参加してきました。
例のごとく獣医師の学会ではなく医師の学会であったので、何千人というたくさんのお医者さんに混じって(おそらく獣医師は私だけ…)ちょっと心細かったですがとても刺激を受けてきました。
私が専門にしている腹腔鏡外科、特に胆嚢や肝臓の外科は獣医師の世界ではまだまだ非常に遅れていて(日本でも海外でも)、医師のレベルからするとうん十年の開きを感じます。
悔しいですが、我々獣医師の世界で論議されるのは腹腔鏡手術をやりました、成功しました、というレベルです。
一方、医師のレベルは当たり前ですが世界中でものすごく研究や臨床がされていて、非常に細かく、またたいへん高いレベルの話をしています。
同じ手術をするのにも日進月歩。どうしたら安全性を引き上げることができるのか、どう考えたら出血量を少なくすることができるのか、そんな話を毎日毎日朝から晩までずっと食事をしながらでも議論していました。
私は動物の手術においても決して引けを取ることなく、同レベルのクオリティの高い手術をしたいと思っているので、こうして様々な学会にお邪魔して勉強させていただいています。
明日、すぐにできるというわけではないですが、常に上を目指して頑張りたいです。

今回も非常に刺激を受け、また知らなかったこともたくさん学んで帰ってきました。
たった一つでも知らないことが明確になり、その対処法や考え方を学ぶことが明日につながると思います。こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、動物や人も同じ哺乳類。器官の構造や発生過程はほぼ同じと考えられるので、人の医学から応用できることは山ほどあります。
ペットも同じ家族だから人と同じように治してあげたい、同じレベルを目指してあげたいです。

そんな中で今回お話ししたいなと思ったのは、学会会場でどの位置に座るか、座席を確保するか、ということです。
単純なことですが、会場でどの位置に座るかということは非常に大切だと今回痛感しました。

例えば学会とか研究会とか参加した時、今までであれば私は後ろの方か、真ん中あたりに座っていました。
理由はやっぱり恥ずかしいから…。
多分みんな同じでしょうけど、だいたい後ろの方から埋まってきて前の方が空いてる、というのはよく見かける光景です。ところが今回、ある会場に入ったら人が一杯で立ち見が出ているほどでした。
仕方なく前の方に移動して空席を探しましたがあいにく最前列しか空いていません。そこでちょっと図々しいかなと思いましたが誰も知り合いも居ませんからまあいいやと、その最前列の一番端に座りました。
ほどなくしてそのセッションが始まりました。今回の学会は「アジア太平洋肝胆膵学会」という国際学会も兼ねていたので海外のお医者さんたちもたくさん出席されていました。もちろんスピーカーの先生方も大勢海外から来日されていました。
私の目の前の座長席には長身のフランス人が。その方こそかの有名なDr. Brice Gayetでした。後から知ったのですが非常に著名な方で、世界最高峰の技術をもつ先生だとのこと。すこし高齢の先生ですが、まだ最前線で活躍されているということで日本人ドクターが何人も弟子入りされており、また何度も来日されていらっしゃるとわかりました。
私のほんの1〜2mのところでGayet教授が非常に優しい笑顔で弟子の先生方に話しかけられ、その息吹も感じるほどの近距離でそのオーラや空気感に包まれました。教授は「とにかく安全に。ゆっくり、できるだけゆっくりと。ビデオは決して早回しにしないこと。」と仰られ、発表の時々でメモを取っていました。どの箇所でメモを取っているのか、何がポイントなのか、そんなことを目の前にいる私はつぶさに観察することができて非常にラッキーでした。こんなこといつも座っている後ろの席ではとても体験できないことでした。肝胆膵外科を専門にされている医師の先生でもなかなか体験できないことではないかと…。アイドルを目の前に興奮している感覚でした(笑)。

学会にしても研究会にしてもとにかく講師の目の前、吐息がわかるほどの席に陣取ること。これは初学者のような一獣医師にとってはとてつもない大きな発見でした。
多分これからは私は一番前の一番いいところに陣取って話を聞くようになるでしょう。これだけでも今回の学会参加には意味があったと思いました。本当にためになりました!

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posted by もとき at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記